25/04/2026
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"オリスがスイス時計産業に果たした歴史的役割"
なぜオリスはスイス時計業界から敬意を表されているのか。
19世紀中頃、スイス時計産業は世界シェアの70%を占めていました。
ところが1876年。アメリカのウォルサムが全自動部品生産ラインを発表し、時計産業に機械工業化の波が押し寄せます。当時のスイスでは家内制手工業と工場制手工業の集まりで、スイスの時計職人一人当たり生産量は年産40本程度。ところが工場制機械工業を導入したアメリカの時計職人一人当たり生産量は年産150本。圧倒的効率化により遂にはアメリカ製時計のエントリーモデルは1896年には1ドルまで下落します。その結果アメリカ市場への時計出荷額は20%以下に急減し、大規模な不況が起こります。
そんなさなかの1904年、廃業した時計工場を買い取りオリスが創業。近代化機械化を導入し僅か数年で300人を超える従業員を雇用する企業に急成長していきます。
しかし多くのスイス時計産業では工業化の波に乗り遅れ、価格下落と製品に対する高い関税を突破するために、部品のまま輸出販売する中小企業が続出。海外組み立ての安いスイス時計の出現で高級品も価格下落に苦慮することとなります。
更に第一次世界大戦の勃発で多くの時計工場が軍需工場に転用。不況下でも存続を続けていましたが、終戦により時計産業に復帰すると一気に供給過多となり、過剰在庫を抱えた工場は原価を割って在庫処分をするダンピングを行い、販売価格の下落と共に膨大な負債を抱えるようになります。
こうした状況を憂い、1926年にムーブメントメーカーが集まって設立されたエボーシュSAが価格競争を是正し、輸出規制を行うことで対抗策を講じるようになります。
この試みはある程度の効果を生み出しつつありましたが、1929年には世界恐慌が発生。スイス時計産業も大不況が吹き荒れ2万人以上の時計職人が職を失いました。
ただでさえ膨大な負債を抱えていたスイス時計産業が立ち直る兆しを見せたところでの世界恐慌。この事態を重く見たスイス政府とスイス銀行が出資し、1931年エボーシュSA等を傘下にASUAG(スイス時計工業合同会社)を設立。以降、ユニタスやフルリエ、そしてETAなど有力なムーブメントメーカーも続々と参加していきます。
更にはオメガとティソも同様の取り組みを目的としてSIHHを設立。ここにはレマニアが加わります。
そこに規制と保護政策をバックアップするためにスイス政府は1934年スイス時計法を制定し、輸出・製造・技術開発を厳格な許可制にします。
開発には特に厳しい制限が掛かり、各メーカーは既存で持っている素材、技術でしか製造ができないことになりました。
例えばステンレスの素材しか使っていなかったところはステンレスのみ。ゴールドケースしか作っていないところはゴールドケースのみ。手巻きなら手巻きだけ、ピンレバーはピンレバーだけ。技術開発は止まり多くの会社で技術が停滞してしまいます。
この規制は1940年代にスイス時計産業がある程度の危機を乗り越え、ASUAGが政府出資を返済し完全な民間企業となったのちも続きます。
本来の目的から外れ、法律制定の時点で優位性を持っていた会社が優遇され、多くのメーカーは古い技術しか扱うことができず成長できません。
この状況に立ち上がったのがオリスです。
1956年、弁護士のロルフ・ポートマン氏を招聘。スイス時計法の撤廃を求めて法廷闘争を繰り広げます。
その結果、1961年(スイス時計法の更新年)には大幅な規制緩和が始まり、ついに技術開発が解禁。様々なメーカーが技術開発に乗り出します。
有名なところではゼニスのエル・プリメロや、ホイヤー・ハミルトン・ブライトリングのクロノマチック、更にはスイスCEH社によるクォーツ時計の研究開発など、機械式時計の歴史にも名を残す様々な開発がスタートしたのです。
こうした流れもあり1965年には政府がスイス時計法の撤廃を了承。1966年にスイス時計法は完全撤廃されます。
同年1966年にはオリス初のレバー脱進機搭載モデル”スター”を発売開始。翌1967年にはスイスのCEH社が世界初のクォーツ式腕時計を制作。同年エボーシュ・エレクトロニックが設立され、クウォーツ用回路・部品研究開始。
1969年世界初の自動巻きクロノグラフ、エル・プリメロ、そしてクロノマチックが相次いで誕生。
このように1960年代後半、スイス時計産業において一気に技術革新の花が開いたのです。それはスイス時計法撤廃に尽力したオリスとロルフ・ポートマン氏の功績の大きさを物語るものでした。
このまま1970年代には黄金期を迎えるかと思われた矢先の1969年、セイコーがクォーツ腕時計の市販を開始します。遂にクォーツショックの到来です。
このクォーツショックの時代においてもオリス社が果たした役割は非常に大きく、オリス社なくしてETAの機械式ラインは存続しなかったと言われるのですが、その辺りについては過去のコムサ・デ・モードとのコラボモデルの投稿をご参照ください。
今年はスイス時計法完全撤廃とオリス・スターの発売60周年の記念の年。
ぜひスターエディションの発売をお楽しみに!